日本酒を好きでよく飲むという人でも、日本酒がどんな原材料から造られているのかを詳しく知っている方は少ないでしょう。
実は、みなさんが日頃飲んでいる日本酒(清酒)は、大きく3つの原料から造られているお酒です。
こちらの記事では、日本酒の原料について解説します。
日本酒の主な原料は米・米麹・水+酵母
日本酒は、主に米・米麹・水の3つの主原料と、酵母から製造されています。以下は、日本酒の主な原料を表にまとめたものです。
■日本酒の原料一覧
原料名 | 特徴 |
---|---|
米 | 食用の米とは異なる酒造りに適した米「酒造好適米」を使用。使用する米によって、日本酒の味わいが異なる。 |
米麹 | 米のデンプンを糖に分解する麹菌が繁殖したもの。日本酒造りの要。 |
水 | 日本酒の成分の約80%を水が占めている。「カリウム」「リン」「マグネシウム」が含まれている水が日本酒造りに適している。 |
酵母 | 糖分をアルコールと炭酸ガスに変える働きをする。使用する酵母によって、香りや味わいが異なる。 |
その他副原料 | 乳酸菌、醸造アルコールなど。日本酒の味わいや度数を調整する役割を持つ。 |
米
まずは、日本酒を製造するうえで最も大事な原料である「米」についてみていきましょう。
日本酒の原料となるお米「酒米」
日本酒を造るための原料となる米は、私たちが日常的に食べている米とは違い「酒米(さかまい)」または「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」と呼ばれています。
酒米の主な特徴として挙げられるのは、以下の3つです。
- ● 心白(しんぱく)が見られる
- ● たんぱく質・脂質が少ない
- ● 粒が大きく割れにくい
また、代表的な酒米には酒米の王様と呼ばれる「山田錦(やまだにしき)」、ふくよかでコクのある味わいが特徴の「雄町(おまち)」、淡麗ですっきりとした味わいに仕上がる「五百万石(ごひゃくまんごく)」などが挙げられ、山田錦と五百万石で全体の生産量の6割以上を占めています。
より酒米について知りたい方、お酒に使われる米の品種名について知りたい方は、以下のページをご覧ください。
酒米は日本酒の原料米!食用米との特徴の違いや主要な品種を徹底解説
なかには酒米を使用しないお酒もある
基本的に日本酒は酒米を原料に使う方法で製造されていますが、酒蔵によっては私たちが普段食べている食用米を使用した酒造りを行っているところもあります。
食用米は酒米と比べて雑味となる成分が多く含まれており、本来日本酒造りには不向きです。しかし、良質な米を栽培し原料に使用することで、酒米に引けを取らない味わいに仕上げています。
精米歩合が日本酒の種類を分ける
精米歩合とは、精米(米の表面を削り取る作業)して残ったお米の割合をパーセンテージで表したもの。例えば、精米歩合80%の日本酒は、米の20%を削った日本酒ということです。私たちが普段飲んでいる日本酒の味わいは、この精米歩合によって変化します。
また、米をどれくらい磨いたのかによって日本酒の種類が以下のように分類されています。
- ●本醸造酒:精米歩合70%以下
- ●吟醸酒:精米歩合60%以下
- ●大吟醸酒:精米歩合50%以下
さらに、醸造アルコールが含まれているのかなど製法の兼ね合いによって合計8つの特定名称酒に分類されています。
(純米酒は精米歩合の規定はなし)
米麹
日本酒造りに必要な原料の一つ「米麹」。米麹とは、糖をデンプンに分解するために必要な原料で、麹菌が繁殖したものです。麹菌はカビの一種で、主に日本酒に使用される「黄麹菌」、主に泡盛に使用される「黒麹菌」、泡盛以外の焼酎に使用される「白麹菌」の3つが酒造りに使われています。
水
次は、日本酒造りに欠かせない「水」について紹介します。
日本酒造りには欠かせない水
日本酒造りに欠かせないのが、日本酒の成分の約80%を占めているという水。一般的には、酒造の近辺を流れる川の伏流水や井戸水が原料に使用されています。
また、原料には日本酒を仕込むための仕込み水や味わいを調整する割水だけではなく、お米を洗う際(洗米)や浸すとき(浸漬)など、酒造りのさまざまな場面で水が使用されています。
軟水・硬水による違い
硬度とは、水中に含まれるミネラル含有量の目安となる指標のことで、マグネシウムとカリウムがどれくらい含まれているのかを示したもの。含有量が多いものを硬水、少ないものを軟水と呼んでいます。
硬水で造られた日本酒は、辛口テイストでふくよかな味わいになりやすい傾向があります。これは、水中に含まれるマグネシウム含有量が多いためにアルコール発酵が活発に行われ、高いアルコール度数を得られるから。
一方で軟水は、マグネシウム含有量が少なく、アルコール発酵が緩やかに進むため硬水と比べてすっきり淡麗な味わいで、甘みが残ったテイストが特徴です。
割水の有無
出来上がったばかりの日本酒はアルコール度数が高いため、そのまま出荷するのではなく水を加えて度数を調整します。これを割水とよび、度数の調整だけではなく香りや味わいの調整も同時に行っています。一般的には、アルコール度数が15〜16%程度になるように割水を加えます。
一方で、割水を一切行わない日本酒は「原酒」と呼ばれ、アルコール度数の高さと濃厚でガツンとくる香りが特徴です。
「原酒(げんしゅ)」とはどのような日本酒?定義や特徴・飲み方を詳しく解説
酵母
酵母とは、糖をアルコールと炭酸ガスに変える働きをする菌類のこと。発酵の過程で、アルコール以外にもさまざまな成分を造り出し、日本酒の風味に影響を与えます。日本酒の生成には日本酒酵母を使用しますが、ビール用酵母やワイン用酵母、ウイスキー用酵母など、お酒の種類によってさまざまな酵母が存在し、さらにパンや納豆などの発酵食品にとっても大事な役割を担っています。
最近では、メロンやパイナップルのような華やかな香りを生成する酵母も開発されており、フルーティーな味わいの日本酒が多く製造されるようになりました。
また、酵母は日本酒に酸味をもたらしてくれる働きもあります。酸味を含むことで、バランスのとれた味わいに仕上がります。
その他副原料
日本酒は、主に米・米麹・水、そして酵母という原料から出来ていますが、そのほかにもさまざまな副原料をもとに製造されています。それぞれを詳しくみていきましょう。
醸造アルコール
醸造アルコールとは、いわゆる甲類焼酎と同じ原料で造られた蒸留酒のこと。主にサトウキビやとうもろこしなどを原料に使用しています。
醸造アルコールを添加する目的は大きく分けて3つ。
- 1. 日本酒が腐らないようにするため(防腐効果)
- 2. コストを削減するため
- 3. 香味成分を調整するため
その昔、日本にはまだ冷蔵庫がなく、食料を冷やした状態で保存することができませんでした。そこで使用したのが醸造アルコール。醸造アルコールを添加することで、アルコール度数を高め、雑菌の混入を防いでいたのです。
また、原料に醸造アルコールを加えることで、全体量を増やしコストを削減したり、日本酒の味わいを辛口にして香味成分を調整する目的もあります。
ただし、醸造アルコールを添加している日本酒の種類は大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造の4つに限られます。
日本酒の種類が一目でわかる!「特定名称酒」とはどのような分類?
糖類、有機酸、アミノ酸
糖類・有機酸・アミノ酸も、日本酒に欠かせない副原料です。どんな役割があるのか、それぞれみていきましょう。
糖類
日本酒の甘みを調整する役割を果たします。糖類というと、砂糖などの調味料を思い浮かべますが日本酒に使用されるのは主にぶどう糖と水あめです。
有機酸
日本酒に酸味をもたらします。使用する有機酸は主に4つで、爽やかな酸味を生成するリンゴ酸、旨味をもたらすコハク酸、雑菌の繁殖を防ぐクエン酸、そしてエタノールから酢酸を生成する酢酸です。
アミノ酸
日本酒にコクや旨味をもたらします。日本酒には約20種類ほどのアミノ酸が含まれており、これを相対的に表した数値を「アミノ酸度」といいます。
乳酸・乳酸菌
乳酸とは、酒母(蒸した米に水と麹、酵母を加えたもの)造りの際に使用される有機酸のことで、日本酒造りに不要な雑菌を防ぎます。この乳酸を添加するか、乳酸菌をいちから育てて自然の乳酸を作り出すかで日本酒の種類が変わります。
●乳酸を添加する場合:
人工的に乳酸を添加する製法は、現代の日本酒造りの主流であり「速醸系」と呼ばれています。おおよそ10日〜2週間で酒母が完成します。
●乳酸菌を育成する場合:
伝統的な酒造りの製法の一つ。乳酸菌を培養し、天然の乳酸を造り出して活用します。「生酛造り」「山廃仕込み」といった日本酒造りの際に使用されます。約3週間から1ヶ月程度で酒母が完成します。
「生酛(きもと)造り」とはどのような日本酒?特徴や味わいを解説!
「山廃(やまはい)仕込み」とはどのような日本酒?意味や味わい、特徴を解説
日本酒の「造り方(作り方)」知ってますか?工程別に分かりやすく解説!
日本酒の原材料はとてもシンプル!
今回は、日本酒の原料について紹介しました。日本酒は主に米・米麹・水の3つから造られており、至ってシンプル。少ない原料から造られていながらさまざまな味わいを楽しめるのは、日本酒の魅力といえるでしょう。
日本酒の瓶を手に取る機会があったら、裏のラベルを見てみてください。副原料も含めてどんな原料が使用されているのか、新たな発見があるかもしれませんよ。