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「古酒(こしゅ)」とは?定義や味わい、特徴を解説!

日本酒
製法特集
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posted on 2022-12-19
updated on 2022-12-19

時間を置くことで熟成するお酒といえば、ウイスキーやワインを思い浮かべる方が多いでしょう。実は、日本酒にも熟成させて飲まれる清酒があります。

それは「古酒」(読み方:こしゅ)と呼ばれ、日本酒好きの方には昔から親しまれています。

こちらの記事では、古酒の特徴や新酒とのちがい、種類や合う料理などについて詳しく説明します。

<新酒の成り立ち>

分岐条件名称出荷種類醸造方法熟成温度
出荷新酒酒造年度内(6月30日)に瓶詰め・出荷---
古酒6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷濃熟タイプ本醸造酒、純米酒常温熟成
6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷中間タイプ本醸造酒、純米酒、吟醸酒、大吟醸酒低温熟成と常温熟成を併用
6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷淡熟タイプ吟醸酒、大吟醸酒低温熟成

古酒とは?

「古酒」とは長期間熟成させた日本酒で、「長期熟成酒」ともいいます。酒造年度(7月1日から翌年6月30日までの期間)中に造られて出荷される日本酒がすべて「新酒」と呼ばれるのに対して、造られた翌年度以降に出荷されるものはすべて古酒と呼ばれます。

「熟成何年から古酒を名乗れるか」という定義は酒税法上での決まりがなく、ラベルの表示義務もありません。「長期熟成酒研究会」(古酒の技術交流と市場開発を目的とした、古酒を製造する酒蔵が集まり設立された機関)では、「満3年以上酒蔵で熟成させた、糖類添加酒をのぞく清酒」が「熟成古酒」として定義されています。

引用:熟成古酒とは | 長期熟成酒研究会
http://www.vintagesake.gr.jp/aboutvintagesake

古酒には明確な定義がないことから、さまざまな熟成期間のものが商品化されています。
熟成期間が2年から3年のもの、また20年や30年、中には40年以上長期熟成させているものなど、幅広いラインナップが特徴です。商品名にもルールはなく、酒造メーカーによっては熟成年数の長い古酒を「古古酒」として販売しているところもあります。

100年以上熟成させたものが酒蔵から見つかるなど、古酒は日本酒の新たな可能性を感じられる清酒だといえるでしょう。

[日本酒 造り方]

古酒の特徴

古酒は、通常の日本酒とは趣が少し異なり、独特の香りや色合いを持っているのが大きな特徴です。長期の熟成を経て変化した古酒は、もとの清酒とはまったく違うお酒となります。

ドライフルーツやスパイス、ナッツ類のような熟成が感じられる香りを持ち、熟成年数が長くなるとさらに強さが増します。色合いも熟成度合いに応じて黄金色から琥珀色に変化し、とろっとした濃厚さが見た目からも感じ取れるでしょう。

味わいは、一言で表せば「複雑」。日本酒の持つ甘味や苦味、酸味などが凝縮され、芳醇で重厚な旨みが口いっぱいに感じられます。

どっしりとして飲みごたえのある古酒は、濃厚な味付けの料理とよく合います。また、食前酒や食後酒としてたしなむのも、古酒の楽しみ方です。

ちなみに、条件さえ整えられれば個人や家庭でも古酒を造れます。「飲めるようになるまで時間がかかる」「失敗したら飲めなくなる」などデメリットもありますが、興味のある方は挑戦してみるのもよいでしょう。

古酒と新酒の違い

古酒と新酒では、味わいや香り、見た目に至るまで、異なる部分が多く見られます。

基本的に新酒とは、前述の通り酒造年度内に出荷された清酒を指します。古酒同様明確な定義はなく、年度内に製造されて出荷されたものすべてが新酒です。

新酒はその名前の通り、フレッシュさが持ち味。香りも味わいもすっきりと軽く、アルコールの荒々しさや爽やかさが前に出ているのが特徴です。色味も全体的に薄く、みずみずしさが見て取れます。

一方、熟成させた旨みやコクが古酒の持つ特徴です。色合いは新酒と比較すれば濃く、まろやかさや深みを感じるどっしりとした香りや味わいとなっています。熟成の手間がかかるため、新酒と比べて販売価格が高くなっているケースが大半です。

一般的に、新酒はフレッシュさを味わう清酒、古酒は熟成感を味わう清酒となります。

新酒については、以下のページでさらに詳しく解説しています。

[新酒とは?]

古酒の種類

古酒と一口にいっても、商品によってさまざまな違いがあります。明確な製法があるわけではないため、使用する日本酒の種類や熟成期間・方法によって違ったタイプの古酒ができあがるのです。

「長期熟成酒研究会」では、それらを3つのタイプに分類しています。それぞれの特徴については、次の通りです。

濃熟タイプ

本醸造酒もしくは純米酒を常温で熟成させたタイプを、濃熟タイプと呼びます。

熟成を重ねるにつれ、色や香り、味わいが劇的に変化していきます。ねっとりと濃厚な旨みとコクが感じられ、一番古酒らしいタイプだといえるかもしれません。

濃熟タイプの古酒には、こってりとした濃厚な味わいの料理を合わせるとよいでしょう。焼き肉や豚の角煮、フォアグラのソテーなど油分の多い料理や、ビーフシチュー、すき焼きなど味の濃い料理がぴったりです。スパイスの効いたカレーやエスニック料理にもよく合います。

飲用温度は、常温やぬる燗がおすすめです。濃熟タイプの持つ香りや旨みが引き立ち、料理との相性がさらによくなります。

中間タイプ

本醸造酒・純米酒・吟醸酒・大吟醸酒を使い、常温熟成と低温熟成を併用して造られるのが、中間タイプの古酒です。

常温から低温、低温から常温と熟成方法を併用することで、濃熟タイプと淡熟タイプをあわせ持ったような香りと味わいになります。中間的な味わいなので、古酒の入門として最初に飲まれるのもよいでしょう。

酢豚やかば焼きなど甘味や酸味が程よくある料理や、麻婆豆腐やチンジャオロースのような苦みやスパイスを感じる料理にとてもよく合います。ドライフルーツやチョコレートなどと合わせてみるのも、面白い組み合わせです。

飲用温度は常温がおすすめです。香りや味わいがきついと感じられる場合は、少し冷やして飲むと和らぎます。

淡熟タイプ

吟醸酒や大吟醸酒を低温で熟成させた古酒を、淡熟タイプと呼びます。

低温でじっくりと熟成させるため、吟醸酒や大吟醸酒の持ち味が残る香りや味わいを持っています。熟成によって程よい苦味や旨味がバランスよく調和した、深みのある味わいを持つ古酒です。

古酒としては飲みやすいタイプなので、幅広い料理と合わせられます。ローストチキンや魚のあら煮、チーズや生ハムなど旨み成分の多いもの、からすみや塩辛などの珍味、グラタンやミートソースパスタなどの洋食とも非常に相性がよいです。

飲用温度は常温からやや冷やして飲むと、淡熟タイプのバランスのよさが存分に感じられます。

普通の日本酒とは一味違う古酒を味わってみよう!

古酒は、他の日本酒と比べて特徴が際立っているので、好き嫌いがはっきりしてしまう傾向があるのは否めません。しかし、その奥深い味わいを知り、古酒のとりこになる方もいます。

店頭で見ることはあまり多くないかもしれませんが、見かけた際はぜひ一度試してみてください。きっと、新しい日本酒の魅力を発見できます。

知院ゆじ icon_twitter icon_instagram
・ソムリエ
・唎酒師(ききさけし)
・日本ビール検定 - 2級
ワインだけではなく、日本酒もビールも好きなおじさんです。ソムリエ以外に「唎酒師」「日本ビール検定2級」の合格実績があります。
「僕の書いた文が、お酒のつまみになればとてもうれしい」をモットーに、誰にでもわかりやすい内容となるように記事作成しています。
温泉に行ってその土地のお酒を飲むのが好きなのですが、いつも妻の運転手なのでなかなか飲めないのが悩みです。

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