logo     - 彩り豊かなお酒の個性を愉しむメディア -

日本酒の美味しい飲み方って?基本からアレンジまで徹底解説

日本酒
飲用シーン特集
posted on 2022-11-27
updated on 2022-11-25

日本酒は、他のお酒に比べても多種多様な飲み方ができる醸造酒です。ビールならガラス製のジョッキに冷えたビールを注いで飲み、赤ワインならワイングラスに室温のワインを注いで飲むのが定番です。

しかし、日本酒の場合、ガラス製のグラス、陶器のおちょこ、木の升など、さまざまな酒器があり、飲む温度も5〜60℃と幅広く楽しむことができます。


ここでは、日本酒を飲むときの温度、酒器、アレンジの仕方、マナーなど、自宅で日本酒を楽しむための基本を紹介します。


日本酒の飲み方(温度編)

同じ銘柄・種類の日本酒であっても、飲む温度によって香りや味わいが違ってきます。冷やして飲む場合、燗酒にして飲む場合、それぞれにメリット・デメリットがあるのです。

日本酒の楽しみ方のバリエーションを充実させるためにも、基本を押さえておくとよいでしょう。

分類名称温度特徴合う酒の種類
冷酒雪冷え5度瓶・ボトルが結露するほど冷たい本醸造酒・生酒・普通酒
花冷え10度冷蔵庫から出した直後吟醸酒・本醸造酒
涼冷え15度冷蔵庫から出して10分ほど吟醸酒・純米酒・本醸造酒
常温(冷や)常温20~25度いわゆる室温吟醸酒・純米酒・本醸造酒・熟成酒
ぬる燗日向燗30度常温より高めで香りほのか本醸造酒
人肌燗35度ぬるく、まろやか熟成酒
ぬる燗40度温かく、コクが豊か純米酒
熱燗上燗45度酒器に注ぐと湯気が立つ純米酒・本醸造酒
熱燗50度徳利から湯気が立ち、辛口本醸造酒
飛びきり燗55~60度徳利が熱く、さらに辛口純米酒・本醸造酒

冷酒

冷酒とは、冷蔵庫で冷やした状態の日本酒のことで、具体的な温度帯は5〜15℃程度です。


日本酒を冷酒で飲むと、香りをすっきり爽やかに感じることができ、口当たりも引き締まるため、本醸造酒・普通酒・生酒のようにキレのいいお酒に合う飲み方です。


また、吟醸酒・大吟醸酒などの華やかなお酒も、冷酒で飲むことでフルーティな香りや清涼感のある味わいを楽しむことができます。


ただし、あまり冷やしすぎると吟醸香を感じにくくなってしまうため、吟醸酒については10℃以上の温度で飲むことをおすすめします。


冷や(常温)

冷やとは、燗酒に対して「お燗をしない状態」の日本酒のことです。一般的には20〜25℃の常温のお酒を指しますが、広義では常温と冷酒を含んだ5〜25℃程度の温度帯のお酒を指すこともあるため、「冷や」という言葉を使うときは注意が必要です。


日本酒を冷やで飲む場合、冷酒や燗酒のような温度による香味の変化がありません。冷やは、そのお酒本来の特徴を最もよく味わうことができる飲み方なのです。


したがって、吟醸酒・純米酒・本醸造酒など、お酒の種類を問わず、まず冷やで飲んでみることをおすすめします。


ぬる燗

ぬる燗は、飲んで「ぬるい」「温かい」と感じる燗酒で、具体的な温度帯は30〜40℃程度です。日本酒をぬる燗で飲むと、香りがふくよかになり、口当たりはまろやかに、味わいには厚みが出てきます。


ぬる燗は、吟醸酒・生酒など清涼感を楽しむタイプのお酒には向きません。純米酒・生酛・山廃・熟成酒など、まろやかさ・ふくよかさを楽しむお酒に合う飲み方です。


特に純米酒は、ぬる燗で飲むことで、米由来のふくよかな香りや旨味などコクのある味わいを存分に楽しむことができます。


熱燗

熱燗は、飲んで「熱い」と感じる燗酒で、具体的な温度帯は45〜60℃程度です。


ぬる燗に比べると、香りが強く引き締まった印象になるため、華やかな吟醸香を楽しむタイプのお酒には向きません。味わいは、甘味が目立たなくなり、口当たりがシャープになるため、いわゆる「辛口のお酒」という印象が強くなります。本醸造酒や純米酒を引き締まった辛口のお酒として楽しみたいときは、熱燗で飲むことをおすすめします。


後口のキレがよく飲みやすいので、燗酒に慣れていない人はまず熱燗から始めてみるとよいでしょう。

日本酒の飲み方(酒器編)

酒器にはさまざまな種類があり、材質・サイズ・形状などが異なります。同じ銘柄・種類の日本酒を同じ温度で飲むときでも、酒器が異なると香り・味わい・口当たりなどの感じ方が変わるのです。

また、酒器には、酒席を演出する小道具としての役割もあります。

酒器特徴合うお酒の種類合う温度
おちょこ小ぶりサイズの酒器生酒・本醸造酒冷酒・燗酒
ぐい飲みおちょこより大きい純米酒・本醸造酒冷酒・常温・燗酒
升(盛りこぼし)木の香りを感じる本醸造酒・樽酒常温
ワイングラス香りを感じやすい吟醸酒・純米酒冷酒

おちょこ

おちょこは、日本酒用の小ぶりサイズの酒器を指します。陶器製・磁器製・ガラス製・木製・竹製・金属製など、さまざまな材質のおちょこがあります。


おちょこは容量が少ないため、お酒の温度が変化する前に飲み干すことができます。したがって、陶器製・磁器製のおちょこは主に本醸造などの燗酒を、ガラス製・金属製のおちょこは主に生酒などの冷酒を、それぞれぬるくなる前に飲みきりたいときに使うとよいでしょう。


ぐい飲み

ぐい飲みとおちょこを明確に区別する定義はありませんが、ぐい飲みはおちょこよりもサイズが大きい傾向にあります。おちょこよりも容量が多いため、ある程度の温度変化を楽しむ飲み方をする場合はぐい飲みを使うとよいでしょう。


ぐい飲みは、材質によって口当たりや見た目の印象が変わるため、合うお酒も変わってきます。たとえば、陶器製のぐい飲みは、質感が柔らかく温かい印象を与えるため純米酒などの燗酒に向いており、磁器製やガラス製のぐい飲みは、質感が硬く涼しげな印象を与えるため本醸造酒などの冷酒に向いています。


升(盛りこぼし)

盛りこぼしは、木の升の中にグラスを入れて、日本酒をグラスからあふれさせるスタイルです。居酒屋などで客の目の前で注いで見せることが多く、お得な印象を与える一種のパフォーマンスです。


枡にあふれた分の日本酒に木の香りが移ることもあるので、香りが淡い本醸造酒や最初から木の香りがついている樽酒などを飲むのに向いています。


ただし、盛りこぼしには、一度手で持ったグラスを升の中に戻すことが不衛生であることなどのデメリットもあることも認識しておきましょう。

ワイングラス

ワイングラスは、内側に向けて湾曲した形状のものが多く、飲む際に香りを感じやすいという特徴があります。


特に、湾曲性が高いブルゴーニュ型ワイングラスは、華やかでフルーティーな吟醸酒の香りを楽しむのに向いており、湾曲性が低めのボルドー型ワイングラスは、原料の米に由来する純米酒のふくよかな香りを楽しむのに向いています。


本醸造酒や普通酒などは、香り要素が少ないお酒ですが、ワイングラスで飲むことで香りが明確になることもあります。新たな発見を求めて、敢えて本醸造酒をワイングラスで飲んでみるのも面白いかもしれません。


日本酒の飲み方(アレンジ編)

近年、日本酒を凍らせたり、何か他の飲みもので割ったりと、さまざまなバリエーションの飲み方が増えています。

これは、普段日本酒を飲んでいない人たちにも楽しんでもらうための工夫ですが、日本酒を飲み慣れている人にもぜひ試してほしい飲み方です。

オンザロック

オンザロックは、日本酒に氷を入れる飲み方。氷でキンキンに冷えた日本酒の飲み口と、日本酒本来の香味とを同時に楽しむことができ、夏におすすめの飲み方です。


氷は時間とともに溶けてくるので、当然日本酒は少しずつ薄くなっていきます。それを見越して、加水をしていない原酒など、少しアルコール度数の高い日本酒をオンザロックにするとよいでしょう。


季節限定の夏酒は、飲みやすい低アルコールの日本酒が主流ですが、中にはオンザロックで飲むことを前提とした濃い夏酒もあるので、探してみるとよいでしょう。

みぞれ酒

日本酒をゆっくりと時間をかけて冷やすと、通常は日本酒が凍るマイナス10℃程度の温度になっても液体のままでいます。この現象を過冷却といいます。


そして、過冷却された日本酒をグラスに注ぐと、酒の分子が一気に結晶化してシャーベット状になるのですが、これがみぞれ酒です。

シャーベットの部分が口の中で溶けた瞬間に、日本酒の香りが広がり、他の飲み方ではなかなか体験できない飲み口を味わうことができます。また、オンザロックのように日本酒の味わいが薄くなることもありません。

自宅の冷凍庫で日本酒を過冷却させるのは少し難しいかもしれませんが、理科の実験気分で挑戦してみるのもよいでしょう。

カクテル

カクテルは、リキュールなど蒸留酒をベースに使うものが多いようですが、日本酒を使ったカクテルメニューも数多くあります。


日本酒ベースのカクテルには、日本酒が仕上がりの色合いに影響しない、蒸留酒を使った一般的なカクテルよりもアルコール度数が低い、日本酒の特徴である旨味を活かした独特の味わいを出すことができる、などといった特徴があります。


日本酒を使ったカクテルといえば、日本酒とライムジュースを合わせた「サムライロック」が歴史も古く有名ですが、他にもマティーニやレッドアイなど既存のカクテルのベースを日本酒に置き換えたメニューや、緑茶や梅酒などと合わせた日本らしいメニューもあります。


ソーダ割り

日本酒をソーダで割っただけの飲み方で、自宅でも簡単に作ることができます。サケ・ハイボールという名前で呼ばれることも。


ソーダの爽やかなのどごし、刺激的な口当たりがそのまま活きるので、飲みやすく日本酒が苦手な人でも美味しく飲むことができます。


日本酒はもともとアルコール度数が15度程度と低いので、ソーダ割りを作るときはソーダよりも日本酒の割合が多くなるように作るとよいでしょう。


水割り・お茶割り

あまり一般的ではありませんが、日本酒を水やお茶で割る飲み方もあります。


日本酒のアルコール度数は15度前後、ワインのアルコール度数は12度前後が一般的です。

日本酒と水またはお茶を、8対2の割合で合わせることで、ワインと同程度のアルコール度数に薄めることができます。

日本酒のアルコール度数を高いと感じる人におすすめの飲み方です。

柑橘系のフルーツを搾る

吟醸酒の中にはレモンやライムなど柑橘系の香りがするものがありますが、そうしたお酒は柑橘系フルーツとよく合います。


日本酒をグラスに注ぎ、柑橘系フルーツの搾り汁を少し加えただけで、日本酒の香味特徴を残したまま全く新しい飲み物に変身します。


また、柑橘系フルーツを搾った後に残る皮の部分を器にして、そこに柑橘系の香味の日本酒を注ぐという飲み方も人気です。


日本酒の飲み方(振る舞い編)

日本酒は、長い伝統と歴史を持つ、日本の「国酒」とも言えるお酒です。

日本酒を飲むときは各人が美味しく楽しく飲むことが大切ですが、日本酒の伝統を踏まえ、スマートに飲むというのもよいでしょう。

和らぎ水(やわらぎみず)を用意する

お酒をスマートに飲むために大切なのは、泥酔しないこと。そこで必要になってくるのが和らぎ水、いわゆるチェイサーです。


一般的に、人の身体がアルコールを分解するのには、アルコール分の2倍の水分が必要だといわれます。酒だけでなく和らぎ水をほどよく飲むことで、急激に酔っ払うことを防ぐことができます。


また、さまざまな銘柄の日本酒を楽しむ場合、間にバランスよく和らぎ水を挟むことで、味覚をある程度リセットする効果もあります。


無理な飲み方をしない

泥酔することなくスマートにお酒を飲むためには、和らぎ水を飲むこと以外にも注意点があります。

まず、空腹時にいきなりお酒を胃袋に流し込まないこと。すきっ腹の状態でお酒を飲むと、アルコールの吸収も早くなり酔いが回りやすくなります。

一度お酒を飲み始めると、つまみを口にせず延々お酒だけ飲むという人がたまに見受けられます。しかし、日本酒は基本的に、食事と一緒に飲むことを前提とした食中酒です。料理と一緒に飲んでこそ、日本酒の魅力が発揮されます。

また、自分に合ったペースを守って飲むということも大切です。人と一緒に飲んでいると、つい相手のペースに引きずられることがありますが、そこは堪えて、常に自分のペースを守るようにしましょう。

日本酒にまつわるマナーを守る

日本酒にまつわるマナーには、次のようなものがあります。


●日本酒を注ぐ側

徳利から他の人のおちょこに日本酒を注ぐ場合、右手の甲を上にして徳利を持ち、左手を注ぎ口付近に添え、日本酒の筋が細い→太い→細いとなるように注ぎます。 徳利を持つ右手の手のひらがうえを向いた状態で注ぐことは、「逆さ注ぎ」といってマナー違反になるので気をつけましょう。

日本酒を注がれる側

日本酒を注いでもらう側は、おちょこを両手で持って受けるのがマナーです。注いでもらった後は、一口飲んでからテーブルにおちょこを置きましょう。 一方、注いでもらったお酒を一気に飲み干すのもマナー違反です。

他にも、徳利の中身を確かめる「のぞき徳利」や「振り徳利」、複数の徳利に余っている日本酒を1つにまとめる「あわせ徳利」、空になった徳利を横に倒す「倒し徳利」などは、無作法な行為とされます。

いろいろな飲み方で日本酒を楽しもう!

日本酒を美味しく頂く方法について、基本の飲み方からさまざまなアレンジまで紹介しました。

日本酒にまつわるマナーなどの話もありましたが、大切なのは各人が日本酒を美味しく楽しく飲むことです。正式な宴席でないのであれば、特に自宅での晩酌のときは、多少のマナー違反など気にせずに、ライトに日本酒を楽しみましょう。

また、「日本酒はこう飲むものだ」という先入観にとらわれず、お好みの飲み方で楽しんでみて下さい。

加藤里加子 icon_twitter
・唎酒師(ききさけし)
・国際唎酒師
・酒匠
・焼酎唎酒師
もともとはただの酒好きリケジョOLでしたが、日本酒好きが高じて、唎酒師やその上位資格の酒匠を取得しました。現在は、女性唎酒師限定コミュニティ「女唎酒師軍団」のメンバーとして日本酒の発展・普及のため微力を尽くしつつ、日本酒をめいっぱい楽しむ日常を送っています。私が愛してやまない日本酒を、多くの人にも好きになって欲しいという思いを込めて記事を書いています。