「日本酒にはいろいろな種類がありすぎて、どう選べばよいかわからない……」と感じている方は多いでしょう。ラベルの名前を見ても違いがよくわからず、適当に選んでしまうこともあるかもしれません。
以下の図のように、日本酒の種類分けの定義はさまざまです。精米歩合(せいまいぶあい)や酛(もと)造り、搾り方、割水・濾過・火入れの有無など、日本酒造りの工程の違いによって、種類が分かれていきます。
こちらの記事では、中でも精米歩合の違いによって分かれる「特定名称酒」の種類について解説します。
日本酒選びに悩まれている方は、ぜひ最後までお読みください。ラベルに記載されている特定名称酒の名前を見れば、その意味やお酒の特徴がある程度わかるようになるでしょう。
その他、日本酒造りの工程において分岐していく種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
[日本酒 造り方]
日本酒の種類一覧表!見分け方・特徴まとめ
日本酒は、酒税法上では「清酒」と呼ばれ、以下のように定義されています。
- ●「米・米麹(こうじ)・水を原料として発酵させてこしたもの」
- ●「米・米麹・水・および清酒かすその他の政令で定める物品を原料として発酵させてこしたもの」
その中でも、特定の要件を満たした清酒が「特定名称酒」です。
特定名称酒
特定名称酒は、原材料や製法によって大きく3種類に分けられます。
吟醸酒
吟醸酒は原材料に「米・米麹・水」を使用し、醸造アルコールを全体量の10%以下で加えて造られたお酒です。
吟醸酒の特徴的な条件として「精米歩合が60%以下の原料米を使用している」「吟醸造りで製造される」という部分があげられます。
■精米歩合
「精米歩合」は、原料米を精米する割合です。通常の食用米では、精米歩合は約93%程度(7%を糠として削る)となっています。日本酒の醸造では精米歩合75%以下のものが多く使われ、吟醸では60%以下のものを使うよう決められているのです。
精米歩合が低くなればなるほど製品の雑味が抑えられ、すっきりとしたお酒になります。しかし、原料米の使用量が増えるため、その分価格が高くなる傾向です。
■吟醸造り
「吟醸造り」とは、通常の日本酒の製造に比べて、低温でゆっくりと発酵させる製法です。酵母も吟醸造りに適したものが使われ、華やかな香りを生み出します。
吟醸酒は、低精米の酒造米の使用と吟醸造りによって、まるでワインのような華やかですっきりとした清酒となるのです。基本的に冷やして飲むとされていますが、少し温めて飲むとまた違った香りと味わいが見られます。
本醸造酒
本醸造酒は吟醸酒と同様、原材料「米・米麹・水・醸造アルコール(全体量の10%以下)」で造られたお酒です。使用される原料米の精米歩合は、70%以下と規定されます。
醸造アルコールが添加されている分、味わいはすっきりとした辛口になる傾向があり、のど越しよくキレのよい清酒に仕上がります。
本醸造酒は、どの温度帯でもおいしくいただけるのが特徴です。冷蔵庫でキンキンに冷やしたものは落ち着いた香りでさらっとした口当たりとなり、徳利がギリギリ持てる程度の熱燗にすれば辛さが引き立ち、香りもシャープになります。
クセは少なくバランスが取れているためどのような料理にも合わせやすく、食前・食中酒として飲むのに適しているお酒です。
純米酒
純米酒は、原材料に「米・米麹・水」しか使用されていない清酒を指します。他の原材料が少しでも含まれている場合は、純米酒を名乗れません。
あわせて「米麹を原料米全体の15%以上使用している」「香味・色択が良好」という条件を満たしている必要があります。(これは他の特定名称酒でも同様)
ただし、純米酒の場合は精米歩合については決まりがなく(以前は精米歩合70%以下という規定があったものの廃止になりました)、極端な話、精米していないお米からでもおいしい清酒ができれば「純米酒」を名乗れるのです。
純米酒は米だけで造られているため、米の持つ旨みや香りが全面に出たふくよかで濃厚な味わいのお酒となります。冷酒にも燗酒にもよく合いますが、40度程度の「ぬる燗」にすると、炊き立てのご飯のような香りと旨みが前に出て、純米酒の特徴がぐっと引き出されます。
純米酒・本醸造酒のさらに細かな分類
特定名称酒は、純米と本醸造(アルコールを添加したもの)で4種類ずつあり、合計で8種類に分けられています。
名前 | 原料 | 精米歩合 | 味の特徴 |
---|---|---|---|
純米大吟醸 | 米、米麹 | 50%以下 | フルーティさを感じる香りで、さらっとしつつもコクを感じる味わい |
純米吟醸 | 米、米麹 | 60%以下 | 華やかだが落ち着いた香り、米の旨味を感じる柔らかい味わい |
特別純米 | 米、米麹 | 60%以下/または特別な製造方法 | 原料や製法の特徴が活かされている、丸みがあるどっしりした味わいのものが多い |
純米 | 米、米麹 | 規定なし | 米の持つ旨みや香りを感じ、濃厚でふくよかな味わい |
大吟醸 | 米、米麹、醸造アルコール | 50%以下 | 雑味をほとんど感じないきれいな味わいで、花のような香りが前面に立つ |
吟醸 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 | 口当たりはさらっとして雑味が少なく、香りは華やか |
特別本醸造 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下/または特別な製造方法 | 使われた原料や製法の特徴を感じる、シャキッとキレのよいお酒が多い |
本醸造 | 米、米麹、醸造アルコール | 70%以下 | すっきりとした辛口で飲みやすく、爽快さを感じる香りと味わい |
すべての特定名称酒は、基準を満たしていればどの名称でも使用できます。
たとえば精米歩合50%以下の純米酒は「純米大吟醸酒」としても「純米酒」としても販売することが可能です。どの名称を名乗るかについては、蔵元の裁量に任されています。
前段で説明していない5種類の詳細は、次の通りです。
純米大吟醸・純米吟醸
米・米麹・水だけで造られた吟醸酒。純米吟醸では精米歩合60%以下、純米大吟醸では50%以下の米が使用され、どちらも吟醸造りで醸造されます。
特別純米
精米歩合が60%以下、または特別な醸造方法で造られた純米酒です。
「特別な醸造方法」については、とくに明確な規定はありません。たとえば、「特定名称米100%使用」「無農薬米100%使用」「木槽(きふね)しぼりで造られている」など、特別な原料や製法を使用して造られることで表示が認められます。
大吟醸
米・米麹・水・醸造アルコールで造られた清酒です。吟醸酒が精米歩合60%以下なのに対し、大吟醸酒では50%以下。精米歩合が低くなる分、吟醸酒よりさらに雑味の少ないお酒になります。
特別本醸造
精米歩合60%以下、または特別な醸造方法で造られた本醸造酒です。「特別」の定義については特別純米酒と同様、特別な原料や製法で造られることで表示が認められます。
普通酒
清酒の定義を満たした上で特定名称酒を名乗らない清酒は、「普通酒」と呼ばれます。普通酒は味もタイプもさまざまで、比較的手に入れやすい価格帯のものが多いことから、晩酌などの日常酒としてよく飲まれます。
ただし、「普通酒だから特定名称酒より品質が劣っている」というわけではありません。特定名称酒はあくまで条件を満たしている清酒に対して、メーカーが名乗る名称です。品質がよくても条件から外れていれば特定名称酒を名乗れませんし、基準を満たしていてもあえて特定名称酒を名乗っていないお酒もあります。
普通酒の名称と品質はイコールではなく、さまざまなタイプの清酒があるので、自分の好みに合ったものを見つけるのもまた楽しいでしょう。
種類を知ってより深く日本酒を楽しもう
日本酒の種類として、まず8つの特定名称酒の特徴を知っておけば、お酒の味わい方がより分かってきます。
自分の好みのものを探すのもよいでしょうし、飲んだことのないタイプに挑戦してみるのも面白いものです。ぜひいろいろな日本酒を味わって、自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。