近くのスーパーやコンビニでもいつでも購入できる日本酒ですが、実は季節ごとにその時期しか味わえない特別な日本酒が登場しています。
日本酒の製造過程における搾りから貯蔵までの期間、火入れの有無などによって、春夏秋冬それぞれで旬な日本酒は異なり、味わいもさまざまです。
こちらの記事では、春夏秋冬それぞれの季節に登場する季節酒を紹介します。
■季節ごとの日本酒の傾向
●冬:フレッシュな味わい
●春:上品なお米の甘み / 飲みやすい味わい
●夏:スッキリ×爽やかな味わい / 白ワインのようなさっぱりとした味わい
●秋:お米の旨味とコクのある味わい / まろやか
季節の日本酒の種類-冬酒
まずは、毎年12〜3月ごろに登場する冬の日本酒「しぼりたて」と「立春朝搾り」を紹介します。これらの日本酒は、毎年冬だけの限定醸造。見つけたら、即買いがおすすめです。
しぼりたて
秋に収穫されたばかりの新米を使用した、毎年12〜3月の間にしか飲めない特別な冬酒「しぼりたて」は、出来上がってすぐの新鮮な生酒で、フレッシュな口当たりと爽やかな味わいが特徴です。お米の旨味やコクはさほどありませんが、まさに日本酒版ヌーヴォーと呼ぶにふさわしく、原料のお米の初々しさやスッキリとした味わいを楽しめます。
通常日本酒は、味わいを一定に保つために貯蔵時と出荷前の2回にわたり火入れを行い出荷されますが、しぼりたてはこの火入れを一切行いません。そのため、日本酒の中で生きている酵母が働き続け、まろやかな味わいに変化する過程も楽しめます。
立春朝搾り
しぼりたての中でも、毎年2月4日の立春(旧正月)の日にだけ手に入れることができる「立春朝搾り」は、春を迎える祝い酒として出される生原酒。
前日の節分の夜から一晩中、日本酒のもとであるもろみを搾り続け、立春を迎える2月4日の早朝に搾り上がった出来立てほやほやの日本酒です。その日の夜には消費者の手に渡るという、これ以上にない新鮮な状態の日本酒を楽しめます。
冬酒をもっと楽しみたい方には、冷蔵庫でキリッと冷やしてから飲むのがおすすめ。冬酒ならではのフレッシュな造りやフルーティーな香りをより味わえます。
また、冬にしか飲めない冬酒には、冬にぴったりの旬のおつまみを合わせるのが良いでしょう。冬に最も脂がのるといわれている寒ぶりやマグロなどの新鮮な魚介類は、冬酒のフレッシュさとも相性抜群です。
季節の日本酒の種類-春酒
満開の桜が咲く春には、卒業式や入学式、入社式などおめでたいイベントが盛りだくさん。そんな春真っ只中の2〜4月にかけて販売される日本酒は春酒と呼ばれ、ラベルにも淡いピンク色をした春を思わせる桜や花々が咲き誇ります。
別名・花見酒とも呼ばれており、親戚や友人が集まるお花見で飲むお酒としてもおすすめ。また、赤色清酒酵母というピンク色に醸すことのできる酵母を使用して春らしさを演出する蔵元も登場しています。
春酒は、日本酒初心者の方でも飲みやすい若干甘めの味わいで、春を彷彿とさせる華やかな香りが特徴です。上品なお米の香りがフワッと香り、咲き誇る桜を眺めながらゆっくりと味わうにはぴったり。おしゃれなラベルデザインも多く販売されているので、お祝い事をさらに盛り上げてくれるでしょう。
春酒をもっと楽しみたい方は、やや冷やして飲むのがおすすめ。春らしい華やかな香りが優しく寄り添い、お米の甘みが口いっぱいに広がります。春に旬を迎えるタケノコや菜の花などと一緒に味わうのもよいでしょう。
季節の日本酒の種類-夏酒
セミが一斉に鳴き始めるジリジリと暑い夏には、さっぱりとしたお酒が飲みたいもの。そんな蒸し暑い夏には、スッキリとした爽快感のあるお酒が日本各地の酒蔵で造られています。
いわゆる、夏酒。夏に飲みたくなるような爽やかなタイプで、白ワインを彷彿とさせるスッキリとした味わいが特徴です。そのほかにも、喉をサラリと潤す清涼スパークリングや火入れをしない生酒など、実は夏酒には決まった定義がなく、バリエーション豊富な味わいを楽しめます。
他の季節酒同様、ラベルにもこだわり、夏らしい爽やかなブルーボトルで提供されるのも特徴です。
夏酒をもっと楽しみたい方は、やはり冷蔵庫で冷やしてからいただくのがおすすめ。キリッとした爽やかな味わいが加わり、さらに涼しげな味わいを楽しめます。旬な夏野菜のおひたしや天ぷら、煮浸しなどとのペアリングも抜群です。
季節の日本酒の種類-秋酒
ジリジリとした暑い夏が終わり、食欲の秋が到来。脂ののったさんまやホクホクの焼き芋などが市場にやってくるころ、日本酒の世界にも秋酒という呼び名の季節酒が登場します。
秋酒は、四季を彩るお酒の中でも人気ナンバーワンの季節酒。寒い冬を越え、春と夏の間にしっかりと熟成されることで、秋にぴったりのまろやかな味わいに仕上がります。そんな秋酒には「ひやおろし」と「秋あがり」の2種類あり、それぞれ味わいは異なります。
ひやおろし
秋酒の一つ「ひやおろし」とは、製造過程の中で2度目の火入れをせずに出荷されるお酒のこと。通常日本酒は、品質を長く保つために貯蔵時と出荷前の2回にわたり火入れが行われます。しかし「ひやおろし」は、冬から春に出来上がった日本酒の貯蔵時に火入れを1回行うのみ。つまり、常温を意味する「冷や」のまま「卸す」=ひやおろしという意味です。
また、蔵出し・出荷時期によって呼び方が異なり、
- ・夏越し(なごし)酒(9月出荷)
- ・秋出し一番酒(10月出荷)
- ・晩秋旨酒(11月出荷)
と、さまざまな「ひやおろし」が販売されています。
「ひやおろし」とはどのような日本酒?由来や特徴、味わいを詳しく解説
秋あがり
秋酒のもう一つ「秋あがり」は、所説あるものの「ひやおろし」との明確な線引きはありません。しかし、同時期に販売される「ひやおろし」と区別するため、火入れの回数に限らず秋までしっかりと熟成させたまろやかな日本酒のことを示すことが多いようです。
お米の旨味とコクが口の中に広がり、まろやかな味わいが楽しめる秋酒は、熱燗で飲むのがおすすめです。40度前後のぬる燗で口に運ぶと、さらなるお米の旨味とコクを楽しめます。また、サンマや真牡蠣、まいたけやしいたけなどの秋の幸と一緒に味わうとより一層秋を楽しめるでしょう。
季節限定・季節ものの日本酒を味わおう!
春夏秋冬それぞれに販売される旬な日本酒を紹介しました。
桜が咲き誇る春には華やかな香りが特徴の春酒、太陽がジンジンと暑い夏には爽やかな夏酒、食欲の秋にはお米の旨味とコクが特徴の特徴の秋酒、雪がしんしんと降り積もる寒い冬にはフレッシュな冬酒と、日本の四季に寄り添うその時期しか飲めない特別な日本酒が販売されています。
ぜひ、日本の四季を味わえる季節限定の日本酒を試してみてください。