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「あらばしり」とはどのような日本酒?定義や味わい、魅力をご紹介!

日本酒
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posted on 2022-12-19
updated on 2022-12-19

酒屋に並ぶ日本酒のラベルに、「あらばしり」または「荒走り」と書かれているのを見たことはあるでしょうか?


言葉の印象から、なんとなく「荒々しいお酒」「勢いがあるお酒」というイメージが浮かぶかもしれません。しかし、あらばしりがどういうお酒なのか、その定義を正確に把握している方は少ないでしょう。


こちらの記事では、あらばしりについて、その定義と特徴、美味しい飲み方や相性のいい料理などを紹介します。


<あらばしりの成り立ち>

分岐条件種類搾りのどこを使うか
搾り (搾りのどこを使うか)あらばしり最初
中取り中盤(2番絞り)
責め最後
通常の日本酒ブレンド

あらばしりとは?

あらばしりは、「荒走り」とも呼ばれ、しぼりの工程で圧力をかけることなく自然に抽出される日本酒を指します。


しぼりは、酒造り終盤の作業で、アルコール発酵が終了したもろみを液体と酒かすに分離する工程。しぼり工程では、槽(ふね)と呼ばれる伝統的な器具や自動圧搾機と呼ばれる器具を用いて、もろみに圧力を加えて酒をしぼります。このとき、圧力を加える前に自然に抽出されるお酒を「あらばしり」と呼ぶのです。


また、あらばしりの次に抽出される部分は「中取り(なかどり)」と呼ばれ、最後に抽出される部分は「責め(せめ)」と呼ばれます。「あらばしり」「中取り」「責め」を分ける厳密な規定はありません。一回のしぼりで抽出される日本酒のどこまでがあらばしりで、どこからが中取りなのかは、酒蔵によって異なります。


あらばしりは最初に出てくるお酒であり抽出量が少ないため、どの酒蔵にとっても希少なお酒といえます。


日本酒の造り方の各工程は、以下の記事で詳しく解説しています。

[日本酒 作り方]

あらばしりの特徴

あらばしりは、香気が高く微発泡でアルコール度数はやや低い傾向にあります。口当たりは炭酸の刺激が強く、フレッシュで荒々しい余韻が残る味わいが特徴です。精米歩合によって大吟醸・純米吟醸・本醸造などさまざまな種類がありますが、どのあらばしりもフレッシュで荒々しい風味が目立ちます。


もろみから最初に出てくるお酒なので、おりと呼ばれる細かい酒かすが混ざり、わずかに白濁していることがあります。おりにより雑味も加わり、味わいが不安定になりますが、それもまたあらばしりの魅力の一つです。


また、あらばしりは一般的に生酒で出荷されます。フレッシュな香味を活かすためには、生酒が効果的だからです。


[生酒ってなに?]

飲み方としては、5〜15℃くらいの温度帯で飲むのがよいでしょう。合わせる料理は、フレッシュさを楽しみたいなら生野菜や薄味の焼き魚、荒々しさを楽しみたいならチーズやジビエなどがおすすめです。


中取り・責めとの違い

あらばしりの後に抽出される「中取り」と「責め」について、味わい・香りの軸で比較すると、上記のチャートのような形になります。


以下で、それぞれの特徴についてより詳しくみていきましょう。


中取り


中取りは、あらばしりの次に抽出されるお酒です。あらばしりが「一番しぼり」だとすると、中取りは「二番しぼり」に当たります。このため、中取りは二級品だと思われがちですが、その認識は間違いです。


あらばしり抽出の段階で炭酸が落ち着き、おりもあまり混ざらなくなるので、中取りは透明度が高く、香り・味ともにまろやかなバランスのいいお酒になります。あらばしり・中取り・責めの中で最も品質のいいお酒で、しかも香味が安定しているため、鑑評会出品酒として中取りを出品する酒蔵も少なくありません。


責め

責めは、中取りの後、しぼりの最後に抽出されるお酒です。あらばしり・中取りを抽出した後のもろみは、液体成分が少なくなっています。そのため、責めをしぼる際は、それまでよりもさらに高い圧力をかけて抽出します。


責めは、アルコール度数がやや高く、酒かす成分も多く含まれているのが特徴です。深みのある味わいがある反面、雑味が多く苦味を強く感じやすいという欠点もあります。


抽出量が少ない上に、責め単独で商品化しない酒蔵も多く、かなり希少なお酒だといえるでしょう。


あらばしりが販売される時期

あらばしりは、酒蔵が酒造りを行っている期間であればいつでも造られます。昔の酒造りは秋から冬の農閑期だけ行う「寒造り」が基本でしたが、現在は一年中酒造りをしている酒蔵もあり、あらばしりは年中販売されています。


しかし、酒蔵のしぼり作業は2〜3月が最盛期なので、この頃が最もあらばしりを入手しやすい時期です。初物を好み、秋に新酒のあらばしりが発売されると、新しい醸造年度最初の酒を飲みたいと思う人も少なくありません。


また、俳句の世界では「あらばしり」が秋の季語になっています。もっとも、季語の「あらばしり」は「新走り」と書き、単にその年の米で造った新酒という意味合いで使われているようです。


[新酒とは?]

日本酒の「一番搾り」あらばしりを味わおう!

あらばしりの定義や特徴、飲み方について解説しました。あらばしりは抽出量が少なく比較的希少なお酒ですが、しぼりの最盛期には十分流通しているので、ぜひ一度味わってみてください。


酒蔵によっては、同じ造りのあらばしり・中取りを出しているところもあります。しぼりのタイミングが違うだけでどれだけ味に違いが出るのか、飲み比べてみても楽しいでしょう。

加藤里加子 icon_twitter
・唎酒師(ききさけし)
・国際唎酒師
・酒匠
・焼酎唎酒師
もともとはただの酒好きリケジョOLでしたが、日本酒好きが高じて、唎酒師やその上位資格の酒匠を取得しました。現在は、女性唎酒師限定コミュニティ「女唎酒師軍団」のメンバーとして日本酒の発展・普及のため微力を尽くしつつ、日本酒をめいっぱい楽しむ日常を送っています。私が愛してやまない日本酒を、多くの人にも好きになって欲しいという思いを込めて記事を書いています。

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