その年に新しくできたお酒は、一般的に「新酒」(読み方:しんしゅ)と呼ばれます。よく知られているのは「ボージョレ・ヌーヴォー」というワインでしょう。また、ワインだけではなく、日本酒にも新酒と呼ばれるお酒があります。
こちらの記事では、日本酒の新酒について詳しく説明します。新酒について少しでも気になっている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
<新酒の成り立ち>
分岐条件 | 名称 | 出荷 | 種類 | 醸造方法 | 熟成温度 |
出荷 | 新酒 | 酒造年度内(6月30日)に瓶詰め・出荷 | - | - | - |
古酒 | 6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷 | 濃熟タイプ | 本醸造酒、純米酒 | 常温熟成 | |
6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷 | 中間タイプ | 本醸造酒、純米酒、吟醸酒、大吟醸酒 | 低温熟成と常温熟成を併用 | ||
6月30日を過ぎて瓶詰め・出荷 | 淡熟タイプ | 吟醸酒、大吟醸酒 | 低温熟成 |
新酒とは?
「新酒」とは、文字通り「新しく造られた日本酒」を指します。一般的な定義としては、酒造年度(7月1日から翌年6月30日までの期間)に造られて出荷された日本酒は、すべて新酒という扱いです。対して、酒造年度をまたいで出荷されるものは「古酒」として区別されます。
また、火入れをしていない搾りたての清酒や、酒造年度内に収穫された新米を使用して造られた清酒を指して新酒と呼ぶ場合もあります。
日本酒造りは、秋に収穫された米を使用して、秋口から春にかけて仕込まれるのが一般的です。そのため、新酒と呼ばれる商品が解禁となる時期は、おおむね11月ごろとなります。
日本酒の造り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
[日本酒 作り方]
出荷タイミング以外の定義
酒造年度内に出荷される清酒は、すべて新酒となると説明しました。しかし、新酒の定義はとくに法律で定められているわけではありません。酒造業界内で通常使用される新酒の定義と、商品につけられる新酒の意味合いが異なるケースもあります。
酒造年度内に収穫された新米のみを使用した日本酒
「酒造年度内に収穫された新米を使用して最初に醸造された日本酒」を限定して、新酒と呼ぶ場合があります。
酒造年度内に造られて出荷された日本酒は、昨年以前に収穫された米を使っていても新酒と称することが可能です。また、醸造技術の発達により、大手メーカーでは「四季醸造」と呼ばれる一年中通して仕込まれる日本酒があります。
それらと明確な区別をつけるため、新米を使って造られる最初の清酒を指して新酒とするのが、近年では一般的になりつつあります。
火入れをしていない日本酒
広辞苑では「醸造したままで、まだ殺菌のための火入れ(ひいれ、日本酒を加熱して殺菌する工程)していない清酒」を新酒と呼ぶ、とされています。
このように、醪(もろみ)からしぼってすぐの状態の日本酒を指して、新酒というケースもあります。
生酒との違い
新酒とよく混同されるのが「生酒(なまざけ)」です。
「醸造年度中に造られて出荷される清酒」を新酒と呼ぶのが一般的であるのに対し、生酒は「日本酒の製造工程中に火入れしないお酒」を指します。よって、新酒と生酒は異なる定義を持つものです。
生酒には、火入れ回数やタイミングの違いによって「生酒」「生貯蔵酒」「生詰め酒」と3種類の商品があります。これらは酒造年度をまたいで貯蔵・出荷されるケースもあるため、新酒としての定義にすべて当てはまるとはいえません。
しかし、火入れしていない日本酒を指して新酒と呼ぶ場合があるので、厳密な定義づけが難しいというのが実情です。
また、生酒の中には「しぼりたて」や「初しぼり」と呼ばれる商品があります。しぼりたては搾られてすぐ出荷されたもの、初しぼりはその中でも最初に搾られたものです。どちらも酒造年度中に醸造・出荷までされるため、新酒の定義に該当します。
生酒については、以下のページでより詳しく解説しています。
[生酒ってなに?]
新酒の特徴
新酒の特徴としてあげられるのは、香りや味わいのフレッシュさです。熟成が進んでいないためみずみずしく、香りの爽やかさや、口当たりにピリッとした刺激や荒々しさが感じられるのが、ならではの魅力だといえるでしょう。
新酒の中でも搾りたてのものや原酒(加水されて度数や味わいの調整をしていないもの)は、特徴をダイレクトに味わえます。ただし、フレッシュなぶん、あまり日持ちがしません。開栓したら早めに飲み切ってしまうのが、新酒をより楽しむポイントです。
また、新酒をおいしく飲むには、きりっと冷やすのがおすすめ。爽やかさや新鮮さなどの特徴が引き立ち、さらさらと飲める味わいとなります。
新酒に合うのは、天ぷらや刺し身、炊き合わせなどの素材を活かした料理です。脂の乗った秋冬の魚や、タケノコやフキノトウなど春を感じるような食材と非常によい相性をみせます。
新酒と古酒の違い
新酒とは逆に、酒造年度をまたいで出荷される清酒は「古酒(こしゅ)」と呼ばれます。
フレッシュさが新酒の持ち味ですが、古酒は熟成された香りや味わいが特徴です。みずみずしさや爽やかさは長期熟成によって減り、代わりにコクやまろやかさが立ってきます。スパイスやドライフルーツのような香りとなり、色合いは黄色から琥珀色へと熟成年数が長くなるほど濃くなっていきます。
角が取れてまろやかな口あたりとなり、全体のバランスが取れて奥深さを感じる味わいが魅力です。価格的には、熟成期間が必要な古酒の方が高めとなる傾向があります。
爽快さやフレッシュさを味わうのが新酒、濃厚でコクのある旨みを味わうのが古酒と知っておけば、日本酒を選ぶ際に役立つでしょう。
古酒については、以下のページでより詳しく解説しています。
[古酒とは?]
新酒の日本酒を探してみよう!
新酒の定義はさまざまありますが、すべてに共通するのは「フレッシュで飲みやすいお酒である」ことです。一年中出回るお酒ではなく、出荷時期が限定されるのも新酒の魅力といえます。
季節を感じる旬の料理といただく新酒は、また格別です。店頭で新酒を見かけたら、ぜひそのフレッシュさとみずみずしさを味わってみてください。